研究

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チャイルド・セクシャル・アビューズを
子どもの様子から知る指針

村本 邦子(FLC研究所)

『女性ライフサイクル研究』第2号(1992)より


 チャイルド・セクシャル・アビューズは、外傷などはっきりと目に見える結果を持つ場合と、子ども自身の証言で知る場合を除くと、見過ごされる可能性が高い。それでも、アメリカの研究により、チャイルド・セクシャル・アビューズがあったことを示唆する子どもの行動上の変化があきらかにされている。それをここでは参考までに紹介しよう。
 それによると、小さい子どもが年令不相応の性的知識や行動を示したりする場合はその可能性が非常に高いし、遊び友達やおもちゃを相手に異常で攻撃的な性行為をしている場合もそうである。とくに乳幼児であれば、強迫的にマスターベーションに耽ることがあるし、十代前後の女の子であれば、異常に誘惑的な態度を示すこと、乱交、妊娠が指標になるし、男の子はホモセクシュアリティに過剰な興味を示すかもしれない。その他、チャイルド・セクシャル・アビューズの指標になる行動は次のとおりであるが、もちろん以下のような傾向が見られたからと言って、必ずしも背景にチャイルド・セクシャル・アビューズがあると断定できるわけではない。以下のような症状は、子どもの通常の発達過程において見られることもあるし、それ以外の何らかの心理的問題が引き金となっていることもあろう。少なくとも、一時的に子どもが不安定な精神状態にあるとは言えるので、状況によっては注意しながら見守ることも必要だし、原因が思い当たらない、緊急性があると感じられるならば、可能性のひとつとしてチャイルド・セクシャル・アビューズを疑ってみて、専門家に相談することも必要だろう。

誕生〜5歳の子ども

a. 特定の人物や場所を怖がる
b. 強い恥意識や罪悪感を持つ
c. 嘔吐、摂食障害、腸傷害、睡眠障害などのような身体症状
d. 夜尿、人見知り、分離不安、指吸い、赤ちゃん言葉、ぐずる、しがみつくなど小さい時の状態に退行する
e. 発達不足

6〜9歳

a. 摂食障害(過食、小食)
b. 不安、恐怖症、あまりに強迫的な行動を取る
c. 悪夢、その他の睡眠障害
d. 腹痛、排尿の困難などの身体症状
e. 学校での問題行動、態度や成績の著しい変化

10〜12歳

a. 家族や友人から離れて引き篭もる
b. 抑鬱
c. 悪夢、眠ることに対する不安、長時間にわたって眠り続ける
d. 学業不振
e. 不法な薬物やアルコールの使用
f. 学校へ早く来たり、遅く帰ったりして家庭にいることを怖がる
g. 年齢不相応な身体についての自意識過剰
h. 攻撃性

13〜15歳

a. 家出
b. ひどい抑鬱
c. 不法な薬物やアルコールの使用
d. 自殺を考えたり、それをにおわす態度
f. 学校の無断欠席
g. 学業不振
h. 体育の着替えを拒否する
i. 更衣室やトイレを怖がる
j. 正当な理由もないのにお金や新しい服、贈り物を持っている
k. こっそり泣いている
l. 攻撃的行動、非行
m. 処女でなくなったことを悲しむ
n. 自分のコントロールを超えた状況に追い込まれることに激怒する
o. 自己評価の低さ

 親を始め周囲の大人がこのような知識を持ち、チャイルド・セクシャル・アビューズの可能性を疑う場合、うまく子どもから話しを引き出してあげられるような雰囲気をつくる必要があるだろう。もちろん、子どもが自発的にこのような問題を話せる基盤が出来ていることが望ましいが、それは容易なことではない。そして何らかのチャイルド・セクシャル・アビューズがすでに起こったことがわかったならば、親としてどのような対応をしていくのかを次に紹介する。