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2011年12月のきまぐれトピック子どもへの性的虐待を考える〜臨床的援助と予防と西 順子 1992年、女性ライフサイクル研究所では年報2号で「チャイルド・セクシャル・アビューズ」を特集した。チャイルド・セクシュアル・アビューズとは、家庭内で起こるか家庭外で起こるかを問わず、子どもへの性的な虐待(力の濫用)を指している。当時はまだ、「それは病んだ国のことで、日本には性的虐待はない」と言われていた時代であった。 しかし、子どもへの性的虐待は、私たち自身の問題であると認識し、社会的な働きかけを行ってきた。子どもをもつ母親として性被害から「子どもをどう守れるか」という問題と、性の対象とされてきた女性の問題としてである。 年報2号は、各社新聞で取り上げられ、全国各地から、購読の注文が届き、あっという間に売り切れとなった。予防啓発活動として、子どもへの防止教育プログラムを開発して防止教育を実施したり、専門家への意識啓発として1990年代は、心理臨床学会で自主シンポジウムを開いたりしてきた。そして、時代は変化し、2000年には児童虐待防止が成立、子どもへの性的虐待も社会的に認知されるようになった。防止法から早10年過ぎたが、子どもの置かれている現実は変わったであろうか。 子どもへの性的虐待はいまもなお起こっている。ただ、希望を感じるのは、性虐待を子どもが打ち明けたとき、母親がその声を否認せず、受けとめようとしていることである。親に話せないまま、被害の記憶を失っていたり、あるいは、親に話したとしても、否認され、否定されて受けとめてもらえなかったことで、トラウマ反応が大人になってから顕在化することも多いが、今、母親らがしっかりと子どもの現実と向きあおうとしている。 日頃の臨床のなかで、子どもの性的虐待、性被害の問題と遭遇する。多くが、子どもへの性的虐待が発覚したとき、母親がどうしたらいいかと戸惑い相談に来られる。子どもが母親に被害を打ち明けてのことである。その声を受けとめた母親が、どうしたらよいのかと助言や子どもへのケアを求めている。加害者が顔見知りであることも多く、子どもも母親もその衝撃は大きい。安全感とともに、信頼感を壊される。加害者は子どもが信頼すべき大人の場合もあるし、子どもの場合もある。同じ家族、学校、地域コミュニティのなかで起こった被害に、被害にあった子どものケアはもちろんのこと、今後どう生活していけばよいのか、生活の問題や、人生の問題とも関わってくる。そのなかで、母親たちが、「子どもの安全を守る」のにどうすればよいかと、悩み、葛藤しながら、子どもをケアしようと懸命になっておられる姿を目の当たりにしてきた。 カウンセリングでは、子どもとのプレイセラピーや面接のなかで、トラウマ反応を解放できるようにアプローチしているが、同時に母親への心理教育や母が子どもを支えるサポートを提供している。この20年のなかで、トラウマの解放に有効な様々なアプローチが我が国にも紹介されてきているので、トラウマによる心身への反応を緩和していくことが可能となった。もちろん、1人として同じ人はいないので、個々の回復の文脈に即して考えていかなければならない。回復の文脈をどうつくっていくかは、何よりも母親から学ばせて頂くことが多く、母親との協働作業となると言ってもよい。子どもが自分の自信を取り戻し、回復していくとき、そこには母親の並々ならぬ努力と支えがある。母親をエンパワメントしていくことが、子どもの回復の鍵になると実感している。子どもは安全の基地さえあれば、どんどん外へと世界を拡げていくからである。 子どもが自分の強さ、自信をとり戻し、力強く回復する姿、そしてそれを支える母親の姿に心を打たれる。しかし、子どもが性的に濫用される現実が変わらなければと思う。 日頃は臨床が仕事ではあるが、まだまだ予防啓発活動、社会への働きかけが必要なことを実感している。被害者はもちろん、加害者をつくらない社会のために、子どもの権利が尊重されるコミュニティでなければと思う。虐待とは、子どもの境界線の侵犯である。私たち誰もが、境界線を尊重される権利をもっている(境界線とは、自分の安全や人格やプライバシーを守るために、「私の体」「私の気持ち」「私は私」という感覚のこと)。まずは大人が子どもの身体的、性的、心理的境界線を尊重していかなければならないと思っている。 震災以後、Twitterを始めて、今社会のなかに、性暴力に取り組むさまざまな団体が立ちあがっていることを知った。私自身もまた、予防啓発として自分にできることからと、子どもを性的に濫用されることがなくなるよう、性的虐待は子ども達の身近で起こっていること、その問題意識を伝えていきたいと思う。 ※参照: 子どもの性的虐待の予防、発見、ケアに関する文献 |
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