2006年9月のきまぐれトピック豊かな子育て支援とは津村 薫 1990年の開設以来、女性ライフサイクル研究所にとって「子育て支援」は、大切に取り組んできたテーマだった。私自身も、それをたいへん重要なテーマとして積極的に取り組んできた。 平成9年、社会福祉各法の先陣を切って、50年ぶりに児童福祉法は改正された。大きく様変わりしたのは官主導の「措置」制度から、利用者主体の福祉へという価値観の転換であると言われる。 「子育てはそもそも親がするもの。なぜ支援せねばならないのか?」という風潮は、女性ライフサイクル研究所設立当時には社会的によく聞かれていた言葉だった。当時は「子育て支援」という言葉すら、あまり使われていなかった時代だ。さすがに今それを公言する人は少なくなったにせよ、保育の世界では今なおそれを感じることがある。「本来なら親がすべきことを私たちがしている」、こう考える人は少なくないからだ。 「こちらが支援してしまうことで、きちんと子どもを育てない親が、ますますサボれる口実を与えるような気がして、子育て支援をすることが良いことなのか悪いことなのかと迷う」「自分たちが子どもを抱いてやることは簡単。でもそれをしなきゃならないのは親じゃないんでしょうか?」。そんな保育の現場、子育て支援の現場からの声を、私は何度も実際に聞いてきた。 「子どもには、親以外の大人から愛され、可愛がられる体験も重要。愛情に乏しい背景がある家庭であればなおさらのこと。本来なら親がするべきことを私たちがしている。そのような後ろ向きな子育て支援ではない、積極的な支援こそが、子どもたちの力になるもの」、必ず私はそう話してきた。 内閣府男女共同参画局長を務めた坂東眞理子氏(昭和女子大学大学院教授)も著書、『男女共同参画社会へ』の中で過去、中央児童審議会委員に任命された折、保育の専門家が働く母親に批判的であることに驚いた記憶があると言及している。 大沢真理氏(東京大学社会科学研究所教授)は著書『男女共同参画社会をつくる』の中で、こう延べている。 私たちが「当たり前」だと思っているこのシステムはたいして歴史があるものなどではないのだ。 児童福祉法第一条で、児童福祉の理念が謡われている。 子どもたちが豊かに育まれるために、周囲の大人みんなに責任がある。保育園が子育てをカバーできるのは僅か数時間のことであり、それが親の育児力を奪うものでもなんでもないこと、むしろ社会的に必要な支援であるのだと受けとめたい。 私が受ける講師依頼のうち3分の1強は、保育士・幼稚園教諭・ファミリー・サポート・センター、子育て支援センターからの研修依頼だ。最近最も多い依頼は「援助者側のストレス」と「保護者対応」である。 児童福祉法改正、そして時代の要請と共に、子育て支援は変わることが期待されている。だからこそスキルアップをはかり、保育の専門家として困難を乗り越える力をと考えて企画したのが、毎年夏に行っている「キッズ・サポーター・スキルアップ講座」だ。 今年の夏も、キッズ・サポーター・スキルアップ講座を京都・大阪で開催した。たくさんの方にご受講いただいたが、一部のご感想を紹介したい。 「自らも少しずつ、援助者として変化していきたい」 保育士をはじめとした子育て支援者の困難は多岐に渡っている。これまでになかった役割まで期待されているため、混乱が生じるのはやむを得ないことだろうと思う。 これからも、子育て支援のスキルアップのために微力ながら関わり続けたいと願っている。
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