スタッフエッセイ 2014年1月

初めての、家族旅行

窪田容子

今年も島根の親元で新年を迎えたが、私は1週間前の連休にも島根に行っていた。
両親と姉二人と私の5人で行った、初めての生まれ育った家族だけでの小旅行。

私が子どもだった頃は、時々父方や母方の田舎に帰省をしたが、家族で旅行をしたことはなかった。今ほど家族旅行は一般的ではなかったろうし、旅行に行く経済的余裕もおそらくなかっただろう。私自身は、中学、高校になれば、友達の田舎に小旅行したり、大学時代には、友達と長期の旅行を楽しんだ。家族では、姉たちとタイに行ったり、母や姉や親戚も一緒にクルーズ船で東京に行ったり、子どもが産まれてからは姉たちの家族と2家族、3家族でロッジに泊まったりということはあった。両親は、二人で海外旅行に出掛けたり、母のきょうだい夫婦たちと旅行を楽しんだり、姉一家と温泉旅行に行ったりしていた。

数年前にガンの手術をしてから、心身共に弱ってしまった父。「一度、みんなで旅行しようよ、傘寿(父)と喜寿(母)のお祝いを兼ねて」という話が持ち上がったが、父は体力に自信がないからと最初は乗り気ではなかった。「最初で最後の家族旅行になるかもしれないよ。島根まで行くから」と励まして、姉が企画をしてくれ実現した。忙しい子どもたちの予定を合わせるのは難しく、子どもたちはそれぞれの夫たちに任せて、生まれ育った家族5人だけで出掛けることにした。

松江で集合し、昼食に美味しいお蕎麦を食べ、こたつ船で松江城の堀川巡りを楽しんだ。温泉にゆっくりつかり、夕食にはカニづくしのお膳を戴き、翌日は花と鳥を楽しめるフォーゲルパークへ行った。ゆっくりゆっくり歩く父のペースに合わせながら、昔、父は歩くのが速くて、一緒に歩くと早足にならないと大変だったよね、などと話しながら。

子どもたちや姪っ子甥っ子たちから、写真と傘寿・喜寿のお祝いメッセージを送ってもらい、姉や私の写真とメッセージも添えたアルバムを作って手渡した。またお正月などに帰省するたびにみんなで集まって撮った懐かしい写真を、年代順に並べた思い出のページも作った。子どもがだんだんと増え、成長し、大人は年をとっていく、時の流れを感じるアルバムを、可愛いね、懐かしいね、若かったねとみんなでおしゃべりしながら眺めた。このお正月に帰省したときに、空けておいたスペースに、今回の家族旅行の写真を貼ってアルバムを完成させた。喜んでくれたようで、毎晩眺めているという母。良い子どもたちと孫たちに恵まれて、幸せな人生だったと言っているらしい父。

来たときより帰る頃の方が、少し元気になっているように見える父に、最初で最後の家族旅行なんて言っていたけれど、次はどこに行こうかという話も出た。高齢の両親と、中年の娘3人の、のんびりお気楽な旅。時には夫や子どもも交えながら、また何度も楽しめたらいいな思っている。そして、これからのお正月写真と、これからの家族旅行の写真を貼った2冊目のアルバムを、また作って手渡したいと思う。

(2014年1月)