スタッフエッセイ未来予想図下地久美子 父が、定年退職したのは、7年前だった。これまで仕事人間だった父が、日がな一日、家にいたらどうなるのだろうと、私と母と妹は、相当心配した。父は、元々社交的ではなく、無口で、人と会うよりは、家で本を読んでいたいというタイプ。近所に友人はもとより知人もいない。そうなると、自分の世界にひきこもってしまって、うつ病、さらには認知症になりはしないかと冷や冷やした。 そんなわけで、私と母と妹の間で、「お父さん社会化プロジェクト」が密かに動き出した。 次に、妹が父と一緒に、地域の「中国語サークル」に参加することになった。仕掛け人の妹は早々にリタイアしてしまったが、コツコツ勉強するのが好きな父は、すっかりはまってしまった。朝から晩まで中国語のテープを聴き、NHK「中国語講座」の熱心な受講者となり、めきめき上達した。「中国語サークル」の先生の紹介で、「漢詩教室」や「太極拳」にも通い出した。趣味が同じだと気が合うようで、サークル仲間もできた。高齢者の多いサークルの中では、70代前半の父は若手らしく、今では、サークルの代表をしていて、新メンバーの受付や教室の予約と、忙しくしている。意外に父は、人の世話をしたり、人をまとめたりするのが好きだったんだと、家族が一番驚いている。最近では、中国語通訳のボランティアまでしているそうで、真面目に続けるというのはすごいおまけが付いてくるものだと、我が父ながら感心している。 さて、自分自身を振り返ってみると、私には趣味もなければ特技もない。小学生のときに習っていたピアノは、黄バイエルの途中だし、習字も初段止まり。中学時代は、水泳部だったが、平泳ぎはできないし、クロールで25メートルを泳ぐのがやっとという有り様。 先日、岩波新書の『定年後−豊かに生きるため知恵』という本を読んだ。定年退職者へのインタビューの記録がまとめられた本だ。それによると、20歳から60歳まで働いた場合の労働時間の総計が8万時間で、定年後80歳まで生きたとして、その余暇時間の総計は8万時間になるそうだ。この長い老後を、生かすも殺すも自分次第というわけだ。本に登場する老後の達人たちは、地方に移住して農業をはじめた元会社員もいれば、技能を活かして海外で働く技術者もいた。60歳で卓球をはじめて95歳まで「ベテラン卓球選手権」のチャンピオンの座を維持する女性。80歳で世界各地を旅して旅行記を上梓した男性。NPOを立ち上げて、地域で活動する人。これまでの職歴とは全く畑違いの趣味の料理店を成功させた人などなど。上には上が居るもんだなぁと、ため息が出た。それと同時に、年齢に関わらず、新しいことに挑戦しようとする人々の姿に感動した。 人は、いくつになってもやれるものだ。私の未来予想図は、まだ白紙だけど、今から少しずつ準備をはじめて、楽しい老後を生きられるといいな・・・。 (2007年4月) |
| Copyright © 女性ライフサイクル研究所 | 大阪本社 TEL 06-6354-8014/京都支所 TEL 075-213-7115 電話でのお問い合わせ 月〜金 10:00〜17:30 メールはお問合せフォームからお願いします |
||