スタッフエッセイ 2006年8月時折変身願望森葺a代 娘がまだ小さかった頃、ビデオのキャラクターになりたがった時期があった。 最初は「西遊記」。徳の高い僧侶を吸い込み、溶かして飲めば永遠の命を得られるという壷を持つ妖怪の話。まだ、3歳ぐらいだった娘が気に入ったのは、三蔵法師を狙う女の妖怪で、娘はその妖怪を「怖いおばちゃん」と呼んでいたが、艶やかな容姿に引かれたのか「怖いおばちゃんにして〜!」と、ちゃらちゃらとおもちゃの指輪やアクセサリーを頭や身に付け、大きな布を首に巻き、さらに中指に布端を結んでパッと両腕を広げ、不敵な笑みを浮かべて部屋の中を走り回ってよく遊んでいた(笑)。 次は「魔女の宅急便」で、ビデオを観る時はいつも大変。まず、お下がりでもらった、黒っぽいワンピースに着替える。そして、はたき(我が家には座敷ぼうきがなかったので)にまたがり、赤いバンダナを頭の上でリボンに結ぶ。さらに斜めがけにかばんをかけて出来上がり。準備ができたら、やっとビデオ鑑賞。キキがほうきにまたがり飛び上がる場面では、はたきにまたがり一緒になって「う〜〜〜ん」と力をいれ、顔を真っ赤にしていたっけ。かわいかったな〜。 その娘も18歳。小さかった頃のこんなかわいらしい出来事はすっかり忘れていたのだが、最近、思い出したのには理由がある。 今では、ちゃらちゃらした物とは無縁、剣道2段の腕前を持ち、居合いもたしなむ娘が、なんと栗毛のカツラを買って帰ってきたのだ。また、どうして急にこんなものを買ったか???。聞いてみた。「面白そうやから」と単純な返答。しかし、5900円もしたという。え〜、なんという大奮発!というのも、我が家では、毎月お小遣として、5000円と携帯の基本料金を渡している。しかし娘は、携帯をパソコン代わりに使っているため、お小遣のほとんどを携帯使用料に使い、差し引きすると実質的なお小遣は毎月500円なのだ。お年玉を貯めているとはいえ、毎月のお小遣が500円の彼女に、この5900円という金額は、たいそうな出費だ。 真っ先にかぶりたいと言ったのは、今年70歳になった実家の母。鏡を見て、「や〜、似合うやん」と、まんざらでもなさそうだが、「・・・・」周りの目は厳しい(笑)。その後、奪い取るように実妹、義妹、私、娘と次々試着。そして最後は息子。これがなかなか良く似合い、「こんな子、おる、おる!」と大騒ぎ。彼だけがみんなの携帯に「パチリ」と納まった。 人は、男女、年齢を問わず、潜在的に変身願望があるのだろうか?自分には持ち得ない「栗毛色の巻き巻きカツラ」を目の前にして狂喜乱舞する家族の姿は、実に興味深かった。その後、娘は一度だけ、友達と出かけるときにカツラを付けて行ったが、今ではこの暑い暑い毎日、「時折変身願望」は出番もなく、今では、娘の部屋の片隅でひっそりと木刀の上に掛けられている。しかし、次の出番は近い。お盆休みに夫が帰ってきたときだ。さてさて、夫の「時折変身願望」にも火がつくのだろうか? (2006年8月) |
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